ちょっと長いけど、二人のやり取りがおもしろいので引用する。引用中、Steve はもちろん Steve Jobs、Bill は QuickDraw や HyperCard を書いたことで知られる Bill Atkinson だ。ちなみに、この記事(原文)を書いたのは Andy Hertzfeld (オリジナル Macintosh の開発者の一人で、Folklore.org の製作者)。
(レボリューション・イン・ザ・バレー; p.60「角丸長方形だらけ!」より)
しかし、ここで何かが Steve Jobs の頭に浮かんだ。 「まあ、円と楕円はよくできてたな。でも角の丸い長方形はどうだ? それも今できるのか?」。「いや、そんなことはできませんよ」と Bill は食ってかかった。 [...snip...]
「角の丸い長方形なんて、そこら中にあるだろ! この部屋を見回してみろ!」。確かに、たくさんあった。 [...snip...]
[...snip...] 「OK。参りました」と Bill は認めた。 「思っているほど難しいかどうか、やってみますよ」。 [...snip...]
翌日の午後、Bill は満面の笑みを浮かべて Texaco Towers に戻ってきた。 彼のデモは、見事に角の丸い長方形を、ほとんど普通の長方形と変わりない、猛烈な速さで描くようになった。 彼はその新しい命令を [...snip...]「RoundRects」と名付けた。 次の 2、3 ヶ月の間に、RoundRects はユーザーインターフェースのさまざまな部分に浸透し、まもなく必要不可欠なものとなった。
正直言って、技術者ではない Jobs が Macintosh (初代) の開発に直接的に貢献したとは思えないんだけど、こういう話を聞くと、なるほど Jobs がいなかったら Mac はこうなっていなかったんだな、とわかる。この「角の丸い長方形」の話なんて、Mac どころかその後の GUI の発展にも影響しかねないものだ。もし、あのとき Jobs の頭に「角の丸い長方形」が浮かばなかったら……、もし、Bill が Jobs との議論に勝っていたら……。
ウェブページでも角を丸く
角の丸い長方形は、今も初代 Macintosh の子孫たちに受け継がれている。Mac OS X のウィンドウたちは、たいてい四隅が(少なくとも上部の二つの隅は)丸い。iPhone のアプリアイコンも角が丸い。標準のボタンやリストもやはり角が丸い。改めて見回せば、丸い角はデジタルなモノの中にあふれている。まるで、角の丸いことがデジタルなモノの特性であるかのようだ。デジタルな道具に遺伝子があるなら、そこには「角は丸い」と書かれているにちがいない。
ならば、ウェブページでも角は丸くあるべきだろう。かつてのように、背景画像と table 要素を組み合わせて作らなければならなかった時代ならともかく、今では CSS3 だけで簡単に記述できる。もう、角を丸くしない理由がないじゃないか。Mac の伝統なんだよ。デジタルな遺伝子に書き込まれているんだよ。