前回に引き続き、ウィンドウにおけるアプリケーションウィンドウの配置問題について。今回は、ユーザが行う工夫について考える。
前回の最後に書いたように、ウィンドウを重ならないようにするためにユーザが取り得る工夫は、おおよそ次の 3 つになる。
より大きな画面を手に入れる
たとえば、新しく iMac の購入を検討しているとする。現行の iMac (Mid 2010) には 21.5 インチと 27 インチ の 2 つのモデルがある。予算が許すなら 27 インチの方を手に入れる。画素数でくらべて約 1.8 倍になる。あるいは、置き場所に余裕があるなら、iMac は小さいモデルを選択し、その代わり差額(約 5 万円)で 2 台目のディスプレイを購入するという手もある。
すでにパソコンがある場合はどうするか? 2 台目のディスプレイをつなげることを検討しよう。すべての機種、モデルでそれができるわけではないが、もし可能なら(そして予算と置き場所が許せば)やってみるべきだ。画面の広さが 2 倍(以上)になる。
古くても良いから単体のディスプレイは捨てずに取っておき、新しいパソコン (iMac など) につなげてみると良い。CRT の頃、ディスプレイはとにかく場所を取ったものだが、液晶ディスプレイが普及してからは、机の上に 2 台のディスプレイを並べることも手軽にできるようになった。
物理的に画面を大きくできない場合は「仮想デスクトップ」を利用するという方法もある。Mac なら標準で利用できる機能だ。ただし、「仮想デスクトップ」は一度に見える領域が増えるわけではない。この機能は、むしろユーザが作業コンテキストを明確にするためにあるものだ。
作業コンテキストとは関連のある複数の作業から構成される作業場(ワークスペース)のようなもの。たとえば、twitter クライアントでタイムラインを眺めている時、誰かのツィートにある URL を開きたくなる。そのときブラウザはすぐそばにあるべきだろう。ブラウザでウェブを見ているときにツィートしたくなったなら、twitter クライアントがブラウザの横にあるとウレシイ。この 2 つがそばにあることで「情報探索とコミュニケーション」のための作業場が生まれる。
わたしはブログの記事を Emacs で書いている。自分が書いた記事もふくめて、あちこちのウェブページを参照することになるから、Emacs のすぐ右横には Safari が開いている。左横にはターミナルのウィンドウが 2 つ。記事のネタになるプログラムを走らせたり、man を参照したり(ウェブで見るより手軽)と、これも良く使う。Mail.app にはメモが置いてあるから、これも近くに開いておく。これらがわたしにとっての「ブログを書く」という作業場を構成している。
人は作業に集中すると、他のことが気にならなくなる。そして気にならない情報は見えていなくても良いのだ。むしろ、見えていると気が散って作業の邪魔になる。だから、複数のデスクトップを切り替えられる「仮想デスクトップ」は作業コンテキストの構築に適している。