2010-09-20

フリー ([著]クリス・アンダーソン, [版]NHK出版)

フリー―〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン
日本放送出版協会 ( 2009-11-21 )
ISBN: 9784140814048
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

ぼちぼち読み進めてきて、もうじき読み終わる。改めてフリー(自由と無料)について考えさせられる内容だが、衝撃としては同じ著者による「ロングテール」ほどではない。正確に言えば衝撃を受けたのは「ロングテール」という本を読んだときではなく、ネットのどこか(誰かのブログだったのかな)でロングテールという言葉とその意味するところを知ったときだったけど。

フリーとフリー

英語の free という言葉は 2 つの意味を持つ。日本語ではそれぞれ「自由」と「無料」と訳される。著者はこの言葉をその語源から探り、2 つの意味をそれぞれ「奴隷からの自由」と「費用からの自由」と説明している。通常、ヒトが自由と口にするときは前者を意味する。もちろん、無料と言ったときは後者の意味になる。著者は、本書で扱うのは後者「費用からの自由」なのだ、と明言している(p.28)。

確かに、free と言う言葉が混乱を生む可能性があることは、21 世紀に生きるプログラマなら誰でも知っている。いや、20世紀の終盤を生きたプログラマなら、かな。ともあれ、free を語るとき、自らがどちらの free を念頭に置いているかを表明しなければ、誤解を生むことになりかねない。人は誰しも自分の立場で理解し、考えるからね。

一方で、本当に「奴隷からの自由」と「費用からの自由」を分けて考えられるのだろうか、っていう疑問もあるんだけどね。

フリーの形

なぜフリー(無料)が成立するのか? 著者はそれを 4 つの形に分類している。

  1. 直接的内部相互補助
  2. 三者間市場
  3. フリーミアム
  4. 非貨幣市場

いかつい単語に幻惑されるが、それぞれの説明を聞けばどれも馴染みのあるものばかりだ。

1. は何かをとんでもなく安く(無料)にして、他の高い物を買わせる、という方式。スーツの量販店で 2 着目は無料です、と言われるアレだ。単純に言って、安い(無料)の方の価格が、そうでない方の価格に上乗せされているだけのものだ。

2. は TV の放送(と CM )でお馴染みだ。報道番組であれ、バラエティであれ、ドラマでも映画でも、無料で見られる代わりに CM を見せつけられるというやつだ。

3. は最近のネットサービスで多い。RTM も Evernote もみんなこの方式を取っている。金を払ってくれるヘビーユーザ(またの名を信者)のおかげで、それほどでもない一般ユーザは無料で使うことができる。

4. は...。フリーの形としては実はこれが一番重要なんだが、一番わかりにくいものでもある。言葉にすると、金銭とは別の形で支払っている、となる。けれど、この言葉ではとうていすべてを言い尽くせてはいない。本書でも第12章を丸ごと、この「別の形」で支払うことについて解説してくれているが、納得できないんだよねえ。

アトムとビット

上述の 4 つの形のうち、1. と 2. はどちらも以前から存在するものだ。2. について Google が事情を大きく変えたりもしたが(p.294)、新しい何かというわけではない。一方、3. についてはネットのサービスでもなければなかなか実現が難しいものだ。これが可能なのは、ネットサービスが著者の言う「ビット」の世界に構築されているものだからだ。

「ビット」とは複製が完全かつ容易なモノのこと。つまり、デジタルなコンテンツ(とくにソフトウェア)のことだ。

一方で、デジタルではない従来の物のことを著者は「アトム」と呼ぶ。アトム、すなわち原子であり、物理的な実体をともなった物であったり、人(の提供するサービス)がやったり取ったりされる世界のことだ。こちら側では、複製は高価であったり、そもそも不可能だったりもする。

両者の違いは何か? つまるところ「複製可能性」と「複製容易性」になる。後者も重要だが、とくに前者が肝心なところ。というのは、ビットには可能なこれがアトムでは不可能だから。どれほど費用をかけたとしても、物(や人)の完全な複製はできない。根源的な稀少性がそこにはある。ビットではこれが可能で、かつこの数十年で複製の費用がどんどん低下してきた(だいたいは Intel のおかげ)。

単純に言ってしまえば、安価に作れる(製造できる)ものは、安価に提供できる、っていうことだ。もし、タダで作れるなら、タダで配ったって問題ない。もちろん、実際問題としてタダで作れるってことはないから、いくらかのコストが発生する。ただし、それはとても低い。とても低いから、従来は(アトムの世界では)、不可能だったり困難だったりした方法でもコストの回収ができるようになる。これが現在、あちこちで見かける「フリー」を支えているものの正体だ。

で、その(とても低い)コスト回収の仕組みを分類すると、上述の 4 つになる、というのが著者の主張だ。

本当にフリーなのは?

ただ、4. の形のフリーをどう考えるか、それが問題として残る。費用を注目と評判で回収すると言うだけでは、提供者の動機を説明し切れていないと思う。

これについては、またおいおい。

ま、結局のところ、経済活動のような複雑な行為のシステムはよくわからないってことかもしれないけどな。

おまけ

忙しい人のための著者の主張を手っ取り早く知るための読み方を提案してみる。

  1. 『第2章 「フリー」入門』を読む
  2. 『第16章 「お金を払わなければ価値のあるものは手に入らない」』を読む

この 2 つの章を読めば、まあ大体はわかる。とくに、第16章を読めば、著者の主張(と論理)の弱いところも見えたりしておもしろい。時間があれば目次を眺めて気が引かれたところを拾い読みするのも良い。

あと、キーワードとしての「稀少」と「潤沢」かな。「フリー」を加えた、この 3 つの単語を覚えれば、本書を読んだって言い張れる。

関連書籍

関連リンク

  • The Long Tail (著者クリス・アンダーソンのブログ)

関連記事

0 件のコメント:

コメントを投稿